パレットによる貨物の積載ダウンの解決がSDGs達成に貢献

物流において、パレット輸送への切り替えは、SDGs項目番号5「ジェンダー平等を実現しよう」、
項目番号8「働きがいも 経済成長も」に貢献する活動と考える。しかしながら、パレットに起因する
課題もあるため、簡単に切り替えられないのも実情である。

パレット荷役の導入

フォークリフトの誕生以来100有余年が経つが、第二次世界大戦後に米国からパレット荷役が持ち
こまれたときには衝撃をもって迎えられた。フォークリフトによる大量荷役を目にし、当時、手荷役
作業が唯一の貨物の積み下ろし方法だった日本は、桁違いの作業効率に驚かされることになった。
戦争自体は不幸な出来事であったが、物流をロジスティクスという軍事用語で語る米国から多くを
学んだのも事実である。

薄型パレットの登場

パレット荷役が普及する中、1970年代後半になって
薄いシートがパレットとして機能することが特徴である
シートパレットシステムが米国から輸入された。これによりパレットの厚みが貨物の積載ダウンを
引き起こしていることが初めて認識されるようになった。パレットが厚いのは当たり前であり、
それを薄くするという発想自体、日本では誰も考えつかないものであった。
初期のシートパレットシステムは、米国から輸入されたままのプッシュプルアタッチメントおよび
操作方法であったため、フレコンや紙袋の荷役には不向きとの評価を受け、貨物にダメージを与える
恐れから、日本の物流現場が求める品質要求には合わないとの考えも現れた。

日本の物流業界が求める品質要求への適合

1980年代になり、日本石油化学(株)(現ENEOSテクノマテリアル㈱))はシートパレットを
システムとして販売すべく、気鋭のフォークリフトアタッチメントメーカーである山川エンジニア
リング(株)と提携した。
シートパレットは日本石油化学が、プッシュプルアタッチメントは山川エンジニアリングが、日本
石油化学からの様々なフィードバックをもとに改良・改善に努めたことで、米麦保管用シート
パレットシステムが完成し、農協の米保管用に採用されたことで、ようやく実用性が認められる
ことになった。
これを契機に、パレットによる貨物の積載ダウンに困っていた荷主企業がコンテナ積み込みに
採用するなど応用が進んだため、薄型パレットで貨物の積載ダウンは解決できるが定説となった。

現場の理解・協力が不可欠

シートパレットシステムの導入を40年に亘り支援してきたが、最終的に採不採用を決定する
立場にある会社側がシステム導入を推進したことに加え、物流現場を担う作業者ならびに
フォークリフト運転員を導入活動に巻き込めた案件にて、成功事例が多いという傾向にあった。
より多くの物流現場へのパレット輸送の普及は、薄型パレットによる貨物積載ダウンの解決に
よって促進されると考えるが、シートパレットシステムは、資機材を取り揃えるだけでなく、
運転員に操作技術が備わることで、初めて安心・安全な作業環境が整うため、運転員が操作
技術を容易に習得できる支援体制が重要と考える。あるいは、操作技術の習得が容易な新たな
薄型パレットシステムの開発も普及促進には効果的と考える。